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大阪地方裁判所 平成7年(ワ)4767号 判決

大阪府東大阪市本庄西一丁目六二番地

原告

大和産業株式会社

右代表者代表取締役

西田栄太郎

右訴訟代理人弁護士

阪口徳雄

谷口達吉

右輔佐人弁理士

藤本昇

東京都中央区日本橋浜町二丁目三〇番一号

被告

河淳株式会社

右代表者代表取締役

河崎淳三郎

右訴訟代理人弁護士

上村正二

石葉泰久

石川秀樹

田中愼一郎

主文

一  被告は、別紙物件目録(三)記載の手さげかごを販売してはならない。

二  被告は、その本店及び営業所に存する前項記載の手さげかごを廃棄せよ。

三  被告は、原告に対し、金四二四万二九一六円及びこれに対する平成七年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告のその余の請求を棄却する。

五  訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

六  この判決の第三項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は、別紙物件目録(一)記載の手さげかごを製造し、販売してはならない。

二  被告は、その本店、営業所及び工場に存する前項記載の手さげかご及びその半製品を廃棄し、同手さげかごの製造に必要な金型を除却せよ。

三  被告は、原告に対し、金一一七〇万円及びこれに対する平成七年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  仮執行の宣言

第二  事案の概要

一  事実関係

1  原告の権利

(一) 原告は、スーパーマーケットやデパート等の店内において買い物かごとして使用される「手さげかご」にかかる次の(1)記載の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録意匠」という。)を有しており(争いがない。甲第一、第二号証)、本件意匠権には、(2)ないし(4)記載の各類似意匠の意匠権(その類似意匠の意匠登録を受けた各意匠を、順に「本件類似意匠1」「本件類似意匠2」「本件類似意匠3」という。)が合体している(甲第四、第一〇、第一一号証)。

(1) 登録番号 第八六三九九八号

意匠に係る物品 手さげかご

出願日 平成元年八月二日(意願平一-二八五三四号)

登録日 平成四年一二月二五日

登録意匠 別添意匠公報〈1〉参照

(2) 登録番号 第八六三九九八号の類似一

意匠に係る物品 手さげかご

出願日 平成二年一月一六日(意願平二-九三九号)

登録日 平成五年六月一四日

登録意匠 別添意匠公報〈2〉参照

(3) 意匠に係る物品 手さげかご

出願番号 意願平六-三五三〇一号

登録査定日 平成七年一二月一五日(その後登録されたものと推認される。)

登録意匠 別添類似意匠図面〈1〉参照

(4) 意匠に係る物品 手さげかご

出願番号 意願平六-三五三〇二号

登録査定日 平成八年三月二八日(その後登録されたものと推認される。)

登録意匠 別添類似意匠図面〈2〉参照

(二) 原告は、本件登録意匠の実施をして、手さげかごを製造、販売している(検甲第三号証)。

2  被告の行為

被告は、株式会社セブンーイレブン・ジャパンに対し、手さげかご(検甲第一、第二、第四号証)を販売している(争いがない。以下、被告が販売していることに争いのない右手さげかごを「被告製品」といい、その意匠を「被告意匠」という。)。

被告意匠をどのように特定するかについて、原告は別紙物件目録(一)記載のとおり特定すべきであると主張するのに対し、被告は別紙物件目録(二)記載のとおり特定すべきであると主張し、細かな点で争いがあるが、当裁判所は、被告主張の別紙物件目録(二)添付の被告意匠図面を採用し、別紙物件目録(三)記載のとおり認定するものである(詳細は後記第四の一3(一)説示のとおり)。

二  原告の請求

原告は、被告意匠は本件登録意匠に類似しており、被告が被告製品を製造、販売することは本件意匠権を侵害するものであると主張して、意匠法三七条一項に基づき被告製品の製造販売の停止を、同条二項に基づき被告製品及びその半製品の廃棄並びに被告製品の製造に必要な金型の除却を各求めるとともに、民法七〇九条、意匠法三九条一項に基づき損害賠償として金一一七〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年五月三〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

三  争点

1  被告意匠は本件登録意匠に類似しているか。

2  被告が原告に対して損害賠償義務を負う場合、賠償すべき損害の額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(被告意匠は本件登録意匠に類似しているか)について

【原告の主張】

以下のとおり、被告意匠は本件登録意匠に類似している。

1 本件登録意匠の構成と要部

(一) 本件登録意匠は、別添意匠公報〈1〉記載のとおり、基本的構成態様として、かご本体が横長長方形状の上面幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔を穿設してなり、しかも両側上端縁に一対の把手杆を有してなる手さげかごで、その具体的構成態様は、次のとおりである(別紙本件登録意匠説明図参照)。

A かご本体1の縦横の構成比が約二対三の横長な形態からなり、

B かご本体1の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

C かご本体の正面板及び背面板2には、上下端が半円弧を呈する略楕円形の孔3が縦五列、横二四列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ該孔3の左右端の縦列3a、3bはかご本体1の両側端縁1a、1bに略平行して一直線状に形成されてなり、

D かご本体1の左右側面板6には、前記孔3と同形状の孔が縦五列、横一五列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔の左右端の縦列3a、3bはかご本体1の両側端縁1a、1bに略平行して一直線状に形成されてなり、

E しかも、前記正面板及び背面板2の中央上方部には広告表示用の長方形状の無孔部7が設けられてなり、

F 前記無孔部7によって、正面及び背面の最上列の孔3の中央部分が小孔3cとして形成され、かつ、その小孔3c群の直下の二列目は無孔状態に形成されてなり、

G かご本体1の底面4には格子状の孔5が縦横に整列して穿設されてなり、

H かご本体1の底面4と正面、背面、左右側面の周側面の下側面との間には多数のリブ8がブリッジ状に連接されて多数の窓開き形状として形成されてなり、

I かご本体の長手方向上側端縁には一対の係合部9が突設され、該係合部9には平面から見て略コ字状の把手杆10が回動自在に設けられてなるJ 手さげかご。

(二) 本件登録意匠は、縦横のリブからなるか、周側面及び底面に長方形の孔を数列縦横に整列させて形成した、本体が横長長方形状で、かつ上面側ほど幅広な上面開口型の従来公知の手さげかごを改良創作したものであって、略楕円形状の孔、逆台形状の孔群のプロポーション、底面と周側面の下側面との間におけるリブによる孔の存在などの点に創作のポイントがあり、従来の手さげかごにはない柔らかい印象を与えるものであること、本件類似意匠2(甲第一〇号証)及び本件類似意匠3(甲第一一号証)が、孔の縦列数の相違(本件登録意匠が五列であるのに対し、本件類似意匠2は四列、本件類似意匠3は三列)、孔の形状・大きさの相違(本件登録意匠は孔の形状・大きさが均一であるのに対し、本件類似意匠2及び本件類似意匠3は最上段の孔が下段の孔よりも大きな楕円形状である。)、正面板及び背面板中央上方部の広告表示用の長方形状無孔部における横型長方形のラインの有無(本件登録意匠では右ラインがあるのに対し、本件類似意匠2及び本件類似意匠3ではラインがない。)という差異があるにもかかわらず、本件登録意匠の類似意匠として登録査定を受けていることから、本件登録意匠の要部は、次の点にあるということができる。

〈1〉 かご本体の全体形態は、横長長方形状で上面側に幅広である。

〈2〉 かご本体の周側面(四面)に穿設された孔は、上下端が半円弧状の略楕円形状である。

〈3〉 各周側面(四面)の孔群全体のプロポーションは、それぞれ略逆台形状である。

〈4〉 各周側面(四面)の孔は、各周側面の中心線から縦リブが左右側に進むにつれてかご本体のテーパー角に近づくよう傾斜して形成され、各周側面における左右端の縦列が、かご本体の両側端縁に略平行な一直線状に配置されている。

〈5〉 正面板及び背面板の中央上方部に表示用の無孔部が形成されている。

〈6〉 底面と周側面(四面)の下側面との間に多数のリブを介して窓開き状としている。

(三) なお、被告は、本件登録意匠にかかる意匠登録の無効審判を請求していたが(平成七年審判第一七三三号)、平成八年一二月一三日付で右無効審判請求は成り立たないとの審決がなされた(甲第一五号証)。

2 被告意匠の構成

(一) まず、被告は、被告意匠の特定について、別紙物件目録(一)添付の被告意匠図面の作図上の不備を指摘し、別紙物件目録(三)のとおり特定すべきであると主張するが、正面図及び背面図の無孔部のラインの有無を除き、本来意匠図面の作図としては不要な稜線についての指摘であるので、別紙物件目録(一)のとおり特定すべきである。

(二) 別紙物件目録(一)によれば、被告意匠は、基本的構成態様として、かご本体が横長長方形状の上面幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔を穿設してなり、しかも両側上端縁に一対の把手杆を有してなる手さげかごであり、その具体的構成態様は、次のとおりである(別紙被告意匠説明図参照)。

a かご本体の縦横の構成比が約二対三の横長な形態からなり、

b かご本体の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

c かご本体の正面板及び背面板には、上下端が半円弧を呈する略楕円形状の孔が縦四列、横二〇列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔の左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されてなり、

d かご本体の左右側面板には、前記孔と同形状の孔が縦四列、横一四列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔の左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されてなり、

e しかも、前記正面板及び背面板の中央上方部には広告表示用の長方形状の無孔部が設けられてなり、

f 前記無孔部によって、正面及び背面の最上列の孔の中央部分が小孔として形成され、かつ、その小孔群の直下の二列目は無孔状態に形成されてなり、

g かご本体の底面には、二本の縦枠を介して左右に楕円形状の孔が横向きに多数穿設され、かつ、中央部には正方形状の無孔板とその上下に略おにぎり形状の孔が多数穿設されてなり、

h かご本体の底面と正面、背面、左右側面の周側面の下側面との間には多数のリブがブリッジ状に連接されて多数の窓開き形状として形成されてなり、

i かご本体の長手方向上側端縁には一対の係合部が突設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手杆が回動自在に設けられてなる

j 手さげかご。

3 被告意匠と本件登録意匠との対比

被告意匠を本件登録意匠と対比すると、基本的構成態様において本件登録意匠と共通するほか、その具体的構成態様においても、被告意匠は、〈1〉かご本体の全体形態は、横長長方形状で上面側に幅広である、〈2〉かご本体の周側面(四面)に穿設された孔は、上下端が半円弧状の略楕円形状である、〈3〉各周側面(四面)の孔群全体のプロポーションはそれぞれ略逆台形状である、〈4〉各周側面(四面)の孔は、各周側面の中心線から縦リブが左右側に進むにつれてかご本体のテーパー角に近づくよう傾斜して形成され、各周側面における左右端の縦列が、かご本体の両側端縁に略平行な一直線状に配置されている、〈5〉正面板及び背面板の中央上方部に表示用の無孔部が形成されている、〈6〉底面と周側面(四面)の下側面との間に多数のリブを介して窓開き状としている、という本件登録意匠の要部をいずれも備えている。しかも、被告意匠は、本件登録意匠と被告意匠との対比図(甲第一二号証)から明らかなように、本件登録意匠の類似意匠として登録された本件類似意匠2及び3よりも更に本件登録意匠に酷似している。

したがって、被告意匠は本件登録意匠に類似するものであることが明らかである。

4 被告の主張に対する反論

(一) 被告は、本件登録意匠の要部についての原告の主張を争い、公知意匠として、昭和五八年三月一八日出願公開にかかる実開昭五八-四一三一四号公開実用新案公報(乙第一号証)、昭和六一年二月二五日出願公開にかかる実開昭六一-三一一二九号公開実用新案公報(乙第二号証)、昭和六二年四月一五日出願公開にかかる実開昭六二-六〇五〇九号公開実用新案公報(乙第三号証)、昭和六三年八月二九日出願公開にかかる実開昭六三-一三一九一〇号公開実用新案公報(乙第四号証)、平成元年三月三日出願公開にかかる実開昭六四-三五〇二〇号公開実用新案公報(乙第五号証)、昭和五九年二月一八日出願公開にかかる実開昭五九-二六七一六号公開実用新案公報(乙第六号証)、昭和五六年八月一日出願公開にかかる実開昭五六-九七二二八号公開実用新案公報(乙第七号証)、昭和五八年二月七日出願公開にかかる実開昭五八-一九六三九号公開実用新案公報(乙第八号証)、昭和六一年一二月二三日登録にかかる第七〇一七七八号意匠公報(乙第九号証)、昭和四一年一〇月八日登録にかかる第二五六一六七号の類似一意匠公報(乙第一〇号証)、平成四年一二月二五日登録にかかる第八六三六九一号意匠公報(乙第一一号証)、平成元年五月頃被告が製造、販売していたという買い物かごの写真(乙第一二号証の1ないし5。以下「被告製造物件A」という。)、昭和六三年一一月二二日以降株式会社スーパーメイトが製造、販売していたという買い物かごの写真(乙第一三号証の1ないし6。以下「スーパーメイト製品A」という。)、昭和六三年頃株式会社スーパーメイトが製造し、被告が仕入れて販売していたという買い物かごの写真(乙第一四号証の1ないし6。以下「被告販売物件」という。)、平成三年二月頃から被告が製造、販売しているという買い物かごの写真(乙第一五号証の1ないし6。以下「被告製造物件B」という。)、昭和六二年六月頃から錦化成株式会社が製造、販売していたという買い物かごの写真(乙第一六号証の1ないし6。以下「錦化成製品A」という。)、平成元年一月頃西興産業株式会社が製造、販売していたという買い物かごの写真(乙第一七号証の1ないし6。以下「西興製品A」という。)、平成元年一二月頃以降株式会社スーパーメイトが製造しているという買い物かごの写真(乙第一八号証の1ないし6。以下「スーパーメイト製品B」という。)、太陽ビルメン株式会社製造の後記第八七六六〇一号意匠公報にかかる登録意匠の実施品という買い物かごの写真(乙第一九号証の1ないし6。以下「太陽ビルメン製品A」という。)、平成五年一二月頃以降西興産業株式会社が製造、販売しているという買い物かごの写真(乙第二〇号証の1ないし6。以下「西興製品B」という。)、平成七年一月頃以降西興産業株式会社が製造、販売しているという買い物かごの写真(乙第二一号証の1ないし6。以下「西興製品C」という。)、平成二年五月八日頃から錦化成株式会社が製造、販売していたという買い物かごの写真(乙第二二号証の1ないし6。以下「錦化成製品B」という。)、平成六年に太陽ビルメン株式会社が製造、販売したという買い物かごの写真(乙第二三号証の1ないし6。以下「太陽ビルメン製品B」という。)、昭和六三年一一月二二日以降株式会社スーパーメイトが製造、販売しているという買い物かごの写真(乙第二四号証の1ないし6。以下「スーパーメイト製品C」という。)、平成五年五月二八日登録にかかる第八七六六〇一号意匠公報(乙第二五号証)、平成五年一〇月一二日登録にかかる第八八八四六九号意匠公報(乙第二六号証)、昭和五七年六月一六日出願公開にかかる実開昭五七-九八二二五号公開実用新案公報(乙第二七号証)、昭和五九年四月七日出願公開にかかる実開昭五九-五二九一九号公開実用新案公報(乙第二八号証)、平成三年四月九日登録にかかる第八一四九二一号意匠公報(乙第二九号証)を挙げるが、本件登録意匠の要部を画定するに際して参酌するに値するのはあくまでも本件登録意匠の出願前に既に公知となっていたものに限られるから、被告援用の証拠のうち、本件登録意匠の出願前に登録されたことが明らかな実開昭五八-四一三一四号公報、実開昭六一-三一一二九号公報、実開昭六二-六〇五〇九号公報、実開昭六三-一三一九一〇号公報、実開昭六四-三五〇二〇号公報、実開昭五九-二六七一六号公報、実開昭五六-九七二二八号公報、実開昭五八-一九六三九号公報、第七〇一七七八号意匠公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報、実開昭五七-九八二二五号公報及び実開昭五九-五二九一九号公報に掲載された各意匠並びに本件登録意匠の出願前に製造、販売されていたという被告製造物件A、スーパーメイト製品A、被告販売物件、錦化成製品A、西興製品A及びスーパーメイト製品Cの各意匠以外は、参酌に値しない。

そこで、これらの意匠を整理すると、

〈1〉 リブ式形態というべきものであって、かご本体の周側面を多数本の縦リブと数本の横リブにて構成してなり、構成リブがかご本体の骨組みとして目立った形態のもの(実開昭五八-四一三一四号公報、実開昭六二-六〇五〇九号公報、第七〇一七七八号意匠公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報、被告製造物件A、被告販売物件、錦化成製品A、西興製品A)、

〈2〉 角孔式形態というべきものであって、多数本の縦リブと数本の横リブによって、かご本体の周側面に開設される孔(通気孔)が正長方形状で、かつ、孔が縦横に整然と形成され、しかも多数の孔群が全体としてかご本体の各面において矩形状を呈している形態のもの(実開昭六一-三二一二九号公報、実開昭六三-一三一九一〇号公報、実開昭六四-三五〇二〇号公報、実開昭五九-二六七一六号公報、実開昭五六-九七二二八号公報、実開昭五八-一九六三九号公報)、

〈3〉 横孔式形態というべきものであって、縦リブに比して横リブが多数本からなり、横孔がかご本体の周側面に形成されてなる形態のもの(スーパーメイト製品A、スーパーメイト製品C)

に分類されるところ、これによれば、本件登録意匠における前記創作のポイントである「孔が略楕円形状である」「上面幅広の逆台形状のかご本体に対しその周側面に形成される孔群全体のプロポーションを略逆台形状とし、孔の左右端の縦列をかご本体の両側端縁に略平行な一直線状に配置している」「かご本体の底面と周側面の下側面との間にリブによる孔が存在する」などの構成態様は、本件登録意匠の出願前には全く存在しなかったことがむしろよりいっそう明らかとなる。

(二) 被告は、全体形状が明らかに異なる公知意匠と本件登録意匠の各構成要素の一部を部分的、個別的に対比したうえ、その新規性を否定するが、仮に部分的に公知の部分が存在するとしても、意匠はこの部分と他の構成要素とが一体となったまとまりのある全体形状が看者の注意を惹くのであるから、被告のような観察法は意匠の観察法としては失当であるのみならず、そもそも、被告が公知意匠として挙げるものには、次のとおり、前記本件登録意匠の要部の形状と一致する部分は存在しない。

(1) 孔が略楕円形状であるとの点について、被告が公知意匠として挙げるもののうち、第八六三六九一号意匠公報は、そもそも本件登録意匠の出願当時、未だ発行されていなかった。実開昭五九-二六七一六号公報、実開昭五六-九七二二八号公報、実開昭五八-一九六三九号公報、第七〇一七七八号意匠公報及び第二五六一六七号の類似一意匠公報における孔の形態は正長方形状(矩形状)であって、本件登録意匠のような上下端が半円弧状を呈する略楕円形状でないことは一見明白であるし、被告製造物件Aについては、無孔部上方の数条の孔は楕円形状と思われるものの、その他の孔は、本件登録意匠のような上下端が明確な半円弧状を呈する略楕円形状ではない。

(2) 各周側面(四面)の孔群全体のプロポーションがそれぞれ略逆台形状であるとの点について、被告が公知意匠として挙げる右(1)と同じ意匠のうち、本件登録意匠の出願当時未だ発行されていなかった第八六三六九一号意匠公報は検討の対象外として、その他の意匠における孔群は、矩形状であるか、孔の左右端列が略V字状(三角形状)であって、本件登録意匠における孔群のように孔の左右端列がかご本体の周側端列に平行に沿って整列しているというものではない。

被告は、本件のような手さげかごの意匠の場合、底面及び周側面に多数の孔が穿設されること、その孔群が略逆台形状になることは当然であるとも主張するが、底面及び周側面に多数の孔が穿設されることは当然であるとしても、横長長方形状で上面幅広の開口型であるからといって、その孔群が略逆台形状になることが当然であるとはいえない。被告が公知意匠として挙げる意匠のうち、リブ式形態のもの(前記(一)〈1〉)及び角孔式形態のもの(前記(一)〈2〉)は、逆台形状の買い物かご本体の正面及び側面における中心線に対し左右の各縦リブが平行な直線状に形成されているのに対して、本件登録意匠は、中心線に対し左右の各縦リブが左右側に進むにつれてかご本体のテーパー角に近づくよう傾斜して逆台形状に形成されているものであり、その結果、左右端の縦列の孔はかご本体の両側端縁に略平行な一直線状に配置されるのである。このような思想に基づいて創作された本件登録意匠の形態は、原告が実用新案としても出願しており、新規な形態として既に出願公告を受けている(甲第九号証)。

(3) 各周側面における孔の左右端の縦列がかご本体の両側端縁に略平行な一直線状に配置されているとの点について、被告が公知意匠として挙げるもののうち、第八六三六九一号意匠公報は検討の対象外として、その他の意匠は、かご本体が上面幅広である以上、孔の左右端の縦列とかご本体の両側端縁とは略平行な一直線状になっていない。

(4) 底面と周側面の下側面との間に多数のリブによってブリッジ状の窓が形成されているとの点について、被告が公知意匠として挙げるものは、すべて縦リブを底面側に折り曲げてなる形態であって、本件登録意匠のように小なるリブによって窓を形成した形態ではない。

(5) 被告は、本件登録意匠の出願当時市中に乙第一三ないし第二四号証の買い物かごが出回っていたと主張するかのようであるが、原告はそのような事実は知らない。仮に市中に出回っていた事実があるとしても、本件登録意匠の出願当時に出回っていたのは、被告の主張によっても、スーパーメイト製品A、被告販売物件、錦化成製品A、西興製品A及びスーパーメイト製品Cだけであって、その余の被告製造物件B、スーパーメイト製品B、太陽ビルメン製品A、西興製品B及び同C、錦化成製品B、太陽ビルメン製品Bは、本件登録意匠の出願当時に出回っていたものでないことが明らかである。

そして、スーパーメイト製品A及び同Cは、横孔式形態の買い物かごであって、本件登録意匠とは全く審美感を異にする異質意匠である。

(三) 被告は、本件登録意匠の出願後に出願し登録された後願意匠も、本件登録意匠の創作性を判断するに際して一応の判断資料となりうる旨主張するが、意匠法において、出願にかかる意匠が新規であるか否かは出願時が基準となり、出願前の意匠との対比によって創作のポイントを把握すべきであるから、右主張は失当である。仮に、被告主張のように本件登録意匠の登録後に公知となった意匠を考慮するとしても、被告の挙げる第八六三六九一号意匠公報、第八七六六〇一号意匠公報、第八八八四六九号意匠公報及び第八一四九二一号意匠公報に掲載された各意匠は、いずれもその全体形状が明らかに本件登録意匠と異なるので、これらの意匠の存在によって、前記1(二)主張の〈1〉ないし〈6〉の点が本件登録意匠の要部であることが否定されるものではない。

(四) 被告は、本件登録意匠の要部は、(1)かご本体の正面板、背面板及び左右側面板の両側端縁に縦長さが孔と同じ切欠部が五個存在すること、及び(2)正面板及び背面板における無孔部の外周にほぼ横型長方形のラインが存在することなどにあると主張するが、失当である。

すなわち、かご本体周側面の両側端縁における切欠部は、平面から見ると中央部がやや膨らんでいることから図示されているものであるが、正面から見ればそれほど膨らんで見えるものではなく、むしろ長方形状に認識できる程度のものであるから、被告意匠との対比においては細部的な事項にすぎない。

正面板及び背面板における無孔部の外周に存在するほぼ横型長方形のラインは、被告意匠(別紙物件目録(一))にも存在するネームプレート枠の表示であって、この種買い物かごの製作上必然的に表れるラインにすぎない。意匠上、無孔部があることが重要なのであって、ラインがあることは重要ではない。このことは、前記1(二)のとおり、右のようなラインの存在しない本件類似意匠2、本件類似意匠3が、本件登録意匠の類似意匠として登録査定を受けていることからも明らかである。したがって、仮に被告意匠が被告主張のとおり(別紙物件目録(二))ラインが存在しないものであるとしても、本件登録意匠に類似するものである。

【被告の主張】

以下のとおり、被告意匠は本件登録意匠に類似していない。

1 本件登録意匠の構成と要部

(一) 本件登録意匠は、別添意匠公報〈1〉記載のとおり、基本的構成態様として、かご本体が横長長方形状の上面が幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔を穿設しているが、横長周側面の上部に無孔部を形成し、更に、正面、背面及び左右側面の各側端縁には横長の切欠部を有してなり、しかも横長上端縁両側に一対の把手杆を有してなる手さげかごであり、その具体的構成態様は、次のとおりである。

A かご本体の縦と横上部の構成比が約一対二であり、横下部及び中間部における縦横の構成比が約二対三の横長な形態からなり、

B かご本体の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

C かご本体の正面板及び背面板には、上下端が半円弧を呈する略長楕円形の孔が縦二四列、横五列に、上方になるに従って形状が大きく穿設され、全体の孔群が略逆台形状を呈しており、かつ、該孔の左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されてなり、かご本体の周側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されており、

D かご本体の左右側面板には、前記孔と同形状の孔が縦一五列、横五列に、上方になるに従って形状が大きく穿設され、全体の孔群が略逆台形状を呈しており、かつ、該孔の左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されてなり、かご本体の両側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されており、

E 前記正面板及び背面板の中央上方部で、かつ、該孔の左右端列から中央部へ七個目以降の位置に広告表示用の長方形状の無孔部が設けられてなり、

F 前記無孔部によって、正面及び背面の最上列の孔の中央部分が欠落したため、ほぼ小楕円形の小孔として一二個形成され、かつ、その小孔群の直下の二列目は無孔部に形成されており、

G かご本体の底面には、ほぼ正四角形の孔が格子状に縦一三個、横二三個整列して穿設されており、これらほぼ正四角形の孔の外周に突リブが形成されており、該突リブの四角部は無孔部で、それ以外はほぼ正四角形状の孔が各々中央部に近づくに従い徐々に大きくなるように穿設されており、

H かご本体の底面と正面、背面、左右側面の各周側面の下側面との間には、正面、背面には各二三個の、左右側面には各一三個のリブがブリッジ状に連接されて多数の窓開き形状として形成されてなり、

I かご本体の長手方向上側端縁で前記無孔部の両端に相当する部分には一対の係合部が突設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手杆が回動転自在に設けられてなる

J 手さげかご。

(二) 本件登録意匠の前記基本的構成態様のほとんどの点、すなわち、かご本体が横長長方形状の上面が幅広に形成されてなる上面開口型である点、周側面及び底面に多数の孔を穿設し、両側上端に一対の把手杆を設けている点、横長周側面の上部に無孔部分を形成している点は、実開昭五八-四一三一四号公報、実開昭六二-六〇五〇九号公報、実開昭五九-二六七一六号公報、被告製造物件Aにより、本件登録意匠の出願前に既に公知となっていた。

本件登録意匠の具体的構成態様(前記(一)のAないしJ)についても、以下のとおり、本件登録意匠の出願前に既に公知となっていた。

(1) Aの、かご本体の縦と横上部の構成比が約一対二であり、横下部及び中間部における縦横の構成比が約二対三の横長な形態からなるとの点、及びBの、かご本体の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなるとの点は、実開昭五八-三一二一四号公報、実開昭六一-三一一二九号公報、実開昭六二-六〇五〇九号公報、実開昭六四-三五〇二〇号公報、実開昭五九-二六七一六号公報に記載された意匠と同様である。

(2) Cのうちの、かご本体の正面板及び背面板に上下端が半円弧を呈する略長楕円形の孔が全体として逆台形状を呈しているとの点は、実開昭五九-二六七一六号公報、実開昭五六-九七二二八号公報、実開昭五八-一九六三九号公報、第七〇一七七八号意匠公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報、第八六三六九一号意匠公報に記載された各意匠あるいは被告製造物件Aと同じ形態であり、該孔の左右端の縦列がかご本体の両側端縁と略平行となっているとの点は、実開昭五六-九七二二八号公報、実開昭五八-一九六三九号公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報、第八六三六九一号意匠公報、被告製造物件Aにより、出願前に既に公知となっていた。特に実開昭五六-九七二二八号公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報についていえば、その上端の孔が下端の孔より幅広であることが明らかであるから、孔の左右端の縦列がかご本体の両側端縁と略平行になっているということができる。

また、本件のような手さげかごの意匠の場合、底面及び周側面に多数の孔が穿設されること、その周側面の孔群全体が略逆台形状になることは当然である。すなわち、本件のような手さげかごをスーパー等で使用する場合、水分を含みあるいは水が垂れるような商品を購入すること、多種類の商品を一つのかごに入れることが多いので、当然水切りが良く臭いを発散することができるものでなければならないから、かごの底面及び周側面に多数の孔を穿設することが必要となるし、多くの商品を手早く入れあるいは取り出すためには、上面開口部が広いことが必要となるのは当然である。この結果、かごの周側面に小孔を穿設すると、孔の形状には相違があっても、孔群全体は略逆台形状にならざるをえないのである。

(3) Dの、左右側面板に前記孔と同形状の孔が略逆台形状に形成されているとの点は、実開昭五六-九七二二八号公報、実開昭五八-一九六三九号公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報に記載された各意匠あるいは被告製造物件Aの意匠と同じである。

(4) E及びFの、かご本体の正面板及び背面板に無孔部を設け、該無孔部によって、その上段が小孔部となっているとの点は、実開昭五八-四一三一四号公報、実開昭六二-六〇五〇九号公報、実開昭五九-二六七一六号公報、被告製造物件Aにより、本件登録意匠の出願前に既に公知となっていた。

(5) Gの、底面におけるほぼ正四角形の小孔が格子状に整列して穿設されているとの点は、実開昭五八-四一三一四号公報、実開昭六二-六〇五〇九号公報、実開昭五九-二六七一六号公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報、被告製造物件Aにより本件登録意匠の出願前に既に開示されている。

(6) Hの、かご本体の底面と正面、背面、左右側面の各周側面の下側面との間にブリッジ状に形成される多数の窓開き形状の小孔との点は、実開昭五八-四一三一四号公報、第七〇一七七八号意匠公報、第二五六一六七号の類似一意匠公報により、本件登録意匠の出願前に既に公知となっていた。

原告は、右公知意匠はすべて縦リブを底面側に折り曲げてなる形態であって、本件登録意匠のように小なるリブによって窓を形成した形態ではないと主張するが、具体的な窓を形成しているリブが縦リブで構成されているか、独立の小さな縦リブで構成されているかという素材の違いだけであって、ブリッジ状の窓の形態は同じである。

(7) Iの、かご本体の長手方向上側端縁に係合部を介して平面から見て略コ字状の把手杆が設けられいるとの点は、実開昭五八-四一三一四号公報等多数の刊行物により、本件登録意匠の出願前に既に公知となっていた。

(8) 本件登録意匠の出願当時、市中には、正面板、背面板及び左右側面板の孔の形状が、上下が半円弧を呈する略長楕円形である意匠の買い物かご(スーパーメイト製品A、西興製品B、錦化成製品B、太陽ビルメン製品B、スーパーメイト製品C)、孔の形状は異なるが、正面板、背面板及び左右側面板の孔の全体形状が略逆台形状である意匠の買い物かご(スーパーメイト製品A等多数、すなわち乙第一三ないし第二四号証)、孔の形状は異なるが、正面板、背面板及び左右側面板の孔の形状が上方に行くに従って広くなっていく意匠の買い物かご(被告製造物件B、太陽ビルメン製品B)が出回っていた。

(三) 右(二)に挙げた公知意匠を考慮すると、本件登録意匠において創作性があるとすれば、

〈1〉 かご本体の正面板、背面板及び左右側面板の両側端縁に縦長さが孔と同じ切欠部が五個存在する、

〈2〉 かご本体を平面及び底面から見たときの形状が正確な長方形ではなく、中間部が膨らんでいる結果、中間部に穿設されている孔が側面より見た場合右〈1〉の切欠部として見え、また、平面及び底面から見たときのリブによる窓枠が中間部において大きくなっている、

〈3〉 正面板及び背面板における無孔部の外周にほぼ横型長方形のラインが存在する、

〈4〉 上下端が半円弧を呈する略長楕円形の孔が、正面板、背面板において縦二四列、横五列に、左右側面板において縦一五列、横五列に形成されており、しかも、孔の形状が、上部の孔ほど面積が大きく、下部の孔ほど面積が小さく、かつ、一個の孔においても上方部分が幅広く下方部分が幅狭い、

点であり、この点に本件登録意匠の要部があるというべきである。

原告は、本件登録意匠の正面板及び背面板における無孔部に存在するほぼ横型長方形のラインについて、この種買い物かごの製作上必然的に表れるラインであるから意匠上その存在は重要ではない旨主張するが、正面板及び背面板の中央上方部に存在する無孔部の周囲を横型長方形のラインで囲む形態は、看者に強烈な印象を与えるものであり、創作性があり、意匠の要部となるものである。

(四) 原告は、本件登録意匠の要部を画定するに際して参酌するに値するのはあくまでも本件登録意匠の出願前に既に公知となっていたものに限られると主張するが、本件登録意匠の出願後に出願し登録された後願意匠は、少なくとも特許庁において、創作性の点で本件登録意匠と相違すると判断されたが故に登録されたのであるから、本件登録意匠の創作性を判断するに際しても、一応の判断資料となりうるものである。

また、原告は、公知意匠をリブ式形態、角孔式形態、横孔式形態に分類して本件登録意匠との相違を論じているが、かかる分類は意味がない。そのように分類しても、いずれも多数の縦リブ、横リブから成り立っている周側面に穿設されている孔の形状の差だけであり、その孔の形状がどのように強調されているかの相違にすぎないからである。

2 被告意匠の構成

(一) まず、原告は、被告意匠の特定について、別紙物件目録(一)記載のとおり特定すべきであると主張するが、対象物件の特定においては仔細な点を除きできるだけ物品の形状を正確に表現すべきところ、右物件目録(一)添付の被告意匠図面では、〈1〉正面板における広告表示用の長方形状の無孔部の外周にラインは存在しないのに、正面図においてほぼ横型長方形のラインが存在するかのごとく表示されている、〈2〉底面と正面、背面、左右側面の各周側面の下側面との間に存在する半楕円形状の孔下部に波線状が全周にわたり存在しているにもかかわらず、これが表示されていない、〈3〉平面図において、正面、背面、左右側面の孔に肉厚分の見線が表示されていない、〈4〉把手杆やその係合部に稜線が存在するのに表示されていない、という点において、被告意匠を正確に記載したものとはいえないから、これらの点を正確に記載した別紙物件目録(二)記載のとおり特定すべきである。

(二) 別紙物件目録(二)によれば、被告意匠は、基本的構成態様として、かご本体が横長長方形状の上面が幅広に形成されている上面開口型で、かつ、その周側面及び底面に多数の孔を穿設しており、横長周側面の上部に無孔部分を形成しており、しかも両側上端縁に一対の把手杆を有してなる手さげかごであり、その具体的構成態様は、次のとおりである。

a かご本体1の、縦と横上部の構成比が約一対二であり、横下部及び中間部における縦横の構成比が約二対三の横長な形態からなる。

b かご本体1の周側面2が上方に向かって順次幅広な形態からなる。

c かご本体1の正面板3及び背面板4には、上下端が半円弧を呈する略長楕円形状の孔5が縦二〇列、横四列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔5の左右端の縦列は、かご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成されているが、孔5の左右端の縦列とかご本体1の両側端縁6との間には、縦に前記孔5一個分ほどの幅の無孔部7がある。

d かご本体1の左右側面板8には、前記孔5と同形状の孔が縦一四列、横四列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔5の左右端の縦列はかご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成されているが、右孔5の左右端の縦列とかご本体1の両側端縁6との間には縦に右孔5一個分ほどの幅の無孔部9が存在する。

e しかも、前記正面板3及び背面板4の中央上方部でかつ前記孔5の左右端列から中央部へ五個目以降には、広告表示用の長方形状の無孔部10が設けられてなる。

f 前記無孔部10によって、正面板3及び背面板4の最上列の孔5の中央部分が小楕円孔11として一二個形成され、かつ、その小孔群の直下の二列目は無孔部10に形成されている。

g かご本体1の底面12には、各二本の縦枠13と横枠14により中央部に正方形状の無孔部15が形成され、該無孔部15の前後には三列の略正方形状の小孔16が形成され、該小孔16及び前記無孔部15の左右には前記左右側面板8に形成された略長楕円形状の孔5と同方向、同形状の略長楕円形状の孔が横一三列、縦各四列に穿設されており、これら各孔5、16の外周には四隅部が突出する突リブ21が形成され、かつ、突リブ21の四角部には補強片22が存し、それ以外の外周には半楕円形状の孔18が穿設されている。

h かご本体1の底面12と正面板3、背面板4、左右側面の周側面2の下側面17との間にはほぼ半楕円形状の孔18が形成されている。

i かご本体1の長手方向上側端縁には一対の係合部19が穿設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手杆20が回動自在に設けられてなる。

j 手さげかご。

3 被告意匠と本件登録意匠との対比

被告意匠を本件登録意匠と対比すると、次の(1)ないし(5)のような相違点がある。スーパーメイト製品A等の買い物かご(乙第一三ないし第二四号証)から明らかなように、手さげかごの形状は類似するものが多いが、それらは孔の形状、その数・列数などにより区別されており、これらの点が少しでも相達していれば区別が可能であって誤認混同することはなく、審美感においても相違するのである。したがって、(1)ないし(5)のような相違点は非常に大きい違いであり、全体として異なる美感をもたらすので、被告意匠は本件登録意匠に類似していないというべきである。

(1) 両意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に穿設された略長楕円形状の孔の縦、横の配列数が異なる。

(2) かご本体の正面板及び背面板の無孔部の横の長さは、本件登録意匠ではその無孔部の両側に形成された有孔部の一方の二倍であるのに対し、被告意匠では三倍である。また、当該無孔部の上下の位置は、本件登録意匠ではかご本体の正面板、背面板の上方約三分の一にあるのに対し、被告意匠では上方約二分の一にある。

(3) かご本体の底面は、本件登録意匠では、ほぼ正四角形の孔が格子状に形成されているのに対し、被告意匠では、中央部に無孔部が形成され、その前後に三列の略正方形状の小孔が、左右に左右側面板に形成された孔と同方向、同形状の略長楕円形状の孔が規則正しく形成されている。また、本件登録意匠では、右格子状孔の外周にほぼ正四角形状の小孔が各々中央部に近づくに従い徐々に大きくなるように穿設されているのに対し、被告意匠では、ほぼ均一の半楕円形状の小孔が穿設されている。更に、被告意匠では、各孔の外周に四隅部が突出する突リブが形成され、その四角部には補強片が存在し、それ以外の外周には半楕円形状の孔が穿設されている。

(4) 本件登録意匠では、正面、背面及び左右側面の各側端縁に五個の縦長切欠部が存在するのに対し、被告意匠では、これが存在せず、かつ、各側端縁と略長楕円形状の孔の左右端の縦列との間に縦に右孔一個分ほどの幅の無孔部がある。

(5) かご本体の底面と正面、背面、左右側面の各周側面の下側面との間に、本件登録意匠では多数のリブがブリッジ状に連接されて窓開き形状となっているのに対し、被告意匠では単にほぼ半楕円形状の孔が形成されているにすぎない。

二  争点2(被告が原告に対して損害賠償義務を負う場合、賠償すべき損害の額)について

【原告の主張】

被告は、平成四年一二月頃から本件訴訟提起までの間に、被告製品を少なくとも六万五〇〇〇個製造、販売して、一個当たり一八〇円、合計一一七〇万円の利益を得た。

右被告の得た利益の額は、意匠法三九条一項により原告が被った損害の額と推定される。

【被告の主張】

被告が本件訴訟提起までの間に被告製品を六万五〇〇〇個販売したことは認めるが、その余の事実は否認する。

第四  争点に対する当裁判所の判断

一  争点1(被告意匠は本件登録意匠に類似しているか)について

1  別添意匠公報〈1〉によれば、本件登録意匠の基本的構成態様は、かご本体が横長長方形状で上面が幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔が穿設され、両側上端縁に一対の把手杆を有している手さげかごであり、その具体的構成態様は次のとおりであると認められる。

A かご本体の、上部における縦と横の構成比が約一対二であり、下部における縦と横の構成比が約二対三の横長な形態からなり、

B かご本体の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

C かご本体の正面板及び背面板には、上下端が半円弧状の略長楕円形の孔が、縦五段で、横二四列に、上方になるに従ってわずかに幅広になり、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、両側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されており、

D かご本体の左右側面板には、正面板及び背面板における孔と同形状の孔が縦五段で、横一五列に、上方になるに従ってわずかに幅広になり、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成され、両側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されており、

E 正面板及び背面板の中央上方部に広告表示用の長方形状の無孔部が設けられ、そのほぼ外周に沿ってラインが存在し、

F 右無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが前記孔の約半分で上下端が半円弧状の略楕円形状の小孔として一二個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が前記孔の中央一二列分であり、

G 底面は、中央部がわずかにふくらんだ長方形状であり、左右側面板と平行の二本の突リブと正面板及び背面板と平行の二本の突リブとが中央部で交差し、ほぼ正方形の孔が底面全体にわたって格子状に縦一三個、横二三個(合計二九九個)整列して穿設されており、これらほぼ正方形の孔群の外周には突リブが形成され、該突リブの四角部には無孔部が存し、それ以外の外周には底面から見てほぼ四角形に見え、中央部に近づくに従ってわずかに縦が長くなる孔が、正面板及び背面板に沿ってそれぞれ二三個、左右側面板に沿ってそれぞれ一三個穿設されており、

H 右の突リブ外周の孔は、底面と正面板、背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面においては半楕円形状の孔として表れ、

I かご本体の長手方向上側端縁には一対の係合部が突設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手杆が回動自在に設けられている。

2(一)  ところで、意匠の類否判断は、全体としての美感が問題になる以上、全体的な総合判断によるべきものではあるが、需要者の注意を惹く部分は大きなウエイトをもって評価されるところ、本件登録意匠の意匠に係る物品である手さげかごは、スーパーマーケット等の店舗において、買い物客が購入したい商品を勘定場まで運ぶ便宜のためと併せて支払の済んでいない商品を支払の済んだ商品と明確に区別するために店舗が用意するものであり、このような手さげかごの通常の使用方法において、自然と目に入るのは正面、背面、左右側面であり、底面や平面は目につきにくいから、正面、背面、左右側面の形態が、意匠の類否判断に当たって需要者の注意を惹く部分として大きなウエイトをもって評価されるものといわなければならない(この観点から、底面〔平面〕に穿設された孔の大きさ、形状が異なるのみで、正面、背面及び左右側面は本件登録意匠と全く同一の形態である本件類似意匠1〔甲第四号証。別添意匠公報〈2〉参照〕が類似意匠の意匠登録を受けていることは首肯できるところである。)。

(二)  また、意匠が公知の部分と新規の部分とからなる場合には、その公知の部分は軽視され、新規の部分が大きく評価されるものであるから、この観点から、被告が公知意匠として挙げる実開昭五八-四一三一四号公報(乙第一号証)、実開昭六一-三一一二九号公報(乙第二号証)、実開昭六二-六〇五〇九号公報(乙第三号証)、実開昭六三-一三一九一〇号公報(乙第四号証)、実開昭六四-三五〇二〇号公報(乙第五号証)、実開昭五九-二六七一六号公報(乙第六号証)、実開昭五六-九七二二八号公報(乙第七号証)、実開昭五八-一九六三九号公報(乙第八号証)、第七〇一七七八号意匠公報(乙第九号証)、第二五六一六七号の類似一意匠公報(乙第一〇号証)、第八六三六九一号意匠公報(乙第一一号証)、被告製造物件A(乙第一二号証の1ないし5)、スーパーメイト製品A(乙第一三号証の1ないし6)、被告販売物件(乙第一四号証の1ないし6)、被告製造物件B(乙第一五号証の1ないし6)、錦化成製品A(乙第一六号証の1ないし6)、西興製品A(乙第一七号証の1ないし6)、スーパーメイト製品B(乙第一八号証の1ないし6)、太陽ビルメン製品A(乙第一九号証の1ないし6)、西興製品B(乙第二〇号証の1ないし6)、西興製品C(乙第二一号証の1ないし6)、錦化成製品B(乙第二二号証の1ないし6)、太陽ビルメン製品B(乙第二三号証の1ないし6)、スーパーメイト製品C(乙第二四号証の1ないし6)、第八七六六〇一号意匠公報(乙第二五号証)、第八八八四六九号意匠公報(乙第二六号証)、実開昭五七-九八二二五号公報(乙第二七号証)、実開昭五九-五二九一九号公報(乙第二八号証)、第八一四九二一号意匠公報(乙第二九号証)について検討する。

但し、まず、右のとおり被告が公知意匠として挙げるもののうち、第八六三六九一号意匠公報(乙第一一号証)はその意匠登録が平成四年一二月二五日、第八七六六〇一号意匠公報(乙第二五号証)はその意匠登録が平成五年五月二八日、第八八八四六九号意匠公報(乙第二六号証)はその意匠登録が平成五年一〇月一二日、第八一四九二一号意匠公報(乙第二九号証)はその意匠登録が平成三年四月九日であって、いずれも本件登録意匠の出願日である平成元年八月二日よりも後に意匠登録を受け、発行されたものであるから、これらの意匠公報に記載された意匠については、そもそも本件登録意匠の出願前に公知であったとはいえない。また、被告製造物件B(乙第一五号証の1ないし6)、スーパーメイト製品B(乙第一八号証の1ないし6)、西興製品B(乙第二〇号証の1ないし6)、西興製品C(乙第二一号証の1ないし6)、錦化成製品B(乙第二二号証の1ないし6)、太陽ビルメン製品B(乙第二三号証の1ないし6)については、その写真の製品の製造販売開始日についての被告の主張自体から、太陽ビルメン製品Aについては、第八七六六〇一号意匠公報(乙第二五号証)にかかる登録意匠(平成三年五月二九日出願)の実施品であるという被告の主張自体から、本件登録意匠の出願前に公知であったとはいえない。したがって、これらの意匠は検討の対象から除外すべきものである(その余の製品については、弁論の全趣旨により被告主張の時期に製造、販売されたものと認められる。)。被告は、本件登録意匠の出願後に出願し登録された後願意匠は、少なくとも特許庁において創作性の点で本件登録意匠と相違すると判断されたが故に登録されたのであるから、本件登録意匠の創作性を判断するに際しても一応の判断資料となりうるものであると主張するが、採用することはできない。

(1) 本件登録意匠の基本的構成態様は、右公知意匠のほとんどすべてにみられるものであり、極めてありふれた形態であると認められる。

(2) 本件登録意匠の具体的構成態様のうち、構成Aの「かご本体の、上部における縦と横の構成比が約一対二であり、下部における縦と横の構成比が約二対三の横長な形態からなる」との点、及びBの「かご本体の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなる」との点は、実開昭五八-四一三一四号公報(乙第一号証)、実開昭六一-三一一二九号公報(乙第二号証)、実開昭六二-六〇五〇九号公報(乙第三号証)、実開昭五九-二六七一六号公報(乙第六号証)、第二五六一六七号の類似一意匠公報(乙第一〇号証)記載の各意匠にみられるものであり、ありふれた形態であると認められる。

(3) 構成Cの「かご本体の正面板及び背面板には、上下端が半円弧状の略長楕円形の孔が、縦五段で、横二四列に、上方になるに従ってわずかに幅広になり、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、両側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されている」との点、及びDの「かご本体の左右側面板には、正面板及び背面板における孔と同形状の孔が、縦五段で、横一五列に、上方になるに従ってわずかに幅広になり、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成され、両側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されている」との点については、

実開昭五八-四一三一四号公報(乙第一号証)、実開昭六三-一三一九一〇号公報(乙第四号証)、第七〇一七七八号意匠公報(乙第九号証)記載の各意匠、実開昭六二-六〇五〇九号公報(乙第三号証)記載の意匠及び西興製品A(乙第一七号証の1ないし6)の意匠、並びに実開昭五九-二六七一六号公報(乙第六号証)記載の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形の孔が、縦三段に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、左右端においてはかご本体の両側端縁に沿ってカットされて三角形状に形成され、更に、右実開昭六二-六〇五〇九号公報(乙第三号証)記載の意匠及び西興製品A(乙第一七号証の1ないし6)の意匠にあっては両側端縁との間に底辺の幅が孔一個分ほどの三角形状の無孔部を、右実開昭五九-二六七一六号公報(乙第六号証)にあっては両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部をそれぞれ有しており、

実開昭六一-三一一二九号公報(乙第二号証)、実開昭六四-三五〇二〇号意匠(乙第五号証)記載の各意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形の孔が、縦三段に、全体の孔群が長方形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、両側端縁との間に底辺の幅が孔一個分ほどの三角形状の無孔部を有しており、

実開昭五六-一九七二二八号公報(乙第七号証)記載の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形の孔が上二段に、ほぼ正方形の孔が下二段に、全体の孔群が長方形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直であり(かご本体は、上方に向かって順次幅広な形態であるかのように見えないでもないが、ほとんど看取しえない。)、

実開昭五八-一九六三九号公報(乙第八号証)記載の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形の孔が、縦二段に、全体の孔群が長方形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で(かご本体は上方に向かってわずかに順次幅広な形態からなるように見えるので、子細に観察すれば、全体の孔群は略逆台形状を呈し、孔の縦列は中央から離れるに従ってしだいにわずかに傾斜しているといえるが、かご本体の上方に向かって順次幅広になる程度が極めて小さいため、通常の注意力をもつて観察すれば、全体の孔群は長方形状に見え、孔の縦列もすべて垂直に見える。)、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、

第二五六一六七号の類似一意匠公報(乙第一〇号証)記載の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形の孔が、縦三段に、上段、中段、下段の順に縦長さが短くなり、全体の孔群は略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、左右端及びその一つ内側の縦列はかご本体の両側端縁に沿ってカットされて逆台形状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、

被告製造物件A(乙第一二号証の1ないし5)の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、上下端がわずかに半円弧状になった略縦長長方形状の孔が、縦三段に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、左右端においてはかご本体の両側端縁に沿ってカットされて、上段の孔は底辺が右略縦長長方形状の孔の幅の二倍くらいの逆台形状に、中段及び下段の孔は三角形状にそれぞれ形成され、両側端縁との間に右略縦長長方形状の孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、

スーパーメイト製品A(乙第一三号証の一ないし六)及びスーパーメイト製品C(乙第二四号証の1ないし6)の各意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、左右端が半円弧状の略横長楕円形の孔が、横七列(正面板及び背面板)又は四列(左右側面板)に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、左右端の縦列の孔は、下に行くに従ってしだいに小さく形成され、両側端縁との間に無孔部を有しており、

被告販売物件(乙第一四号証の1ないし6)の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形状の孔が、縦三段に、上段の孔は中段及び下段の孔の二倍の幅で、全体の孔群が横長長方形を逆階段状に三段積み重ねた形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、両側端縁との間に三角形状の無孔部を縦三段に有しており、錦化成製品A(乙第一六号証の1ないし6)の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形の孔が、縦四段に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、左右端においてはかご本体の両側端縁に沿ってカットされて三角形状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、

実開昭五七-九八二二五号公報(乙第二七号証)記載の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形の孔が、縦三段に、上段及び中段の孔群は合わせて全体で略逆台形状を呈するよう、下段の孔群は全体で長方形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、上段及び中段の左右端においては、かご本体の両側端縁に沿ってカットされて三角形状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、

実開昭五九-五二九一九号公報(乙第二八号証)の意匠は、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、縦長長方形状の孔が、縦三段に、上段の孔は中段及び下段の孔の二倍の幅で、全体の孔群が逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、左右端においてはかご本体の両側端縁に沿ってカットされて三角形状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有している、

というものであることが認められる。

このように、構成C及びDのうち、孔自体の形状について上下端がわずかに半円弧状になった縦長長方形のものあるいは左右端が半円弧状の横長楕円形のもの、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設されているが、それは、孔の縦列はすべて垂直で、左右端においてかご本体の両側端縁に沿ってカットされて三角形状に形成されていることによるもの、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有するものは、本件登録意匠の出願前に公知であったことが認められるが、上下端が半円弧状の略長楕円形の孔が上方になるに従ってわずかに幅広になっているとの点、全体の孔群が略逆台形状を呈するについて、孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されているとの点、両側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されているとの点は、本件全証拠によるも、公知となっていたとは認められない。

右認定に反する被告の主張は採用することができない。

被告は、本件のような手さげかごの意匠の場合、周側面の孔群全体が略逆台形状になることは当然であると主張するが、周側面の孔群全体が略逆台形状になっている意匠は、前記のとおり本件登録意匠の出願前の公知意匠として多数存在するとしても、それらはいずれも、孔の縦列はすべて垂直で、左右端又はこれに加えてその一つ内側の縦列のみがかご本体の両側端縁に沿ってカットされていることによるものであり、前示のように、孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されているというものは、公知意匠として存在しなかったのである。

(4) 構成Eの「正面板及び背面板の中央上方部に広告表示用の長方形状の無孔部が設けられ、そのほぼ外周に沿ってラインが存在する」との点は、実開昭五八-四一三一四号公報(乙第一号証)、実開昭六二-六〇五〇九号公報(乙第三号証)、被告製造物件A(乙第一二号証の1ないし6)、被告販売物件(乙第一四号証の1ないし6)、錦化成製品A(乙第一六号証の1ないし6)、西興製品A(乙第一七号証の1ないし6)の各意匠にみられるものであり、ありふれた形態と認められる。「正面板及び背面板の中央上方部に広告表示用の長方形状の無孔部が設けられている」との点に限れば、実開昭五九-二六七一六号公報(乙第六号証)、スーパーメイト製品A(乙第一三号証の1ないし6)、スーパーメイト製品C(乙第二四号証の1ないし6)の各意匠にもみられるものである。

(5) 構成Fの「右無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが前記孔の約半分で上下端が半円弧状の略楕円形状の小孔として一二個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が前記孔の中央一二列分である」との点については、

実開昭五八-四一三一四号公報(乙第一号証)記載の意匠は、無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが縦長長方形の孔の約三分の一の小孔として一〇個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・七段分、横が前記孔の中央一〇列分であり、

実開昭六二-六〇五〇九号公報(乙第三号証)記載の意匠は、無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが縦長長方形の孔の約三分の一の小孔として六個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・七段分、横が前記孔の中央六列分であり、

被告製造物件A(乙第一二号証の1ないし6)の意匠は、無孔部のため、最上断の孔は、縦長さが上下端がわずかに半円弧状になった略縦長長方形状の孔の約半分の小孔として八個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が前記孔の中央八列分であり、

錦化成製品A(乙第一六号証の1ないし6)の意匠は、無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが縦長長方形の孔の約半分の小孔として一三個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が前記孔の中央一三列分であり、

西興製品A(乙第一七号証の1ないし6)の意匠は、無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが縦長長方形の孔の約半分の小孔として一四個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が前記孔の中央一四列分であり、

実開昭五九-二六七一六号公報(乙第六号証)の意匠は、無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが縦長長方形の孔の約三分の一の小孔として六個形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残り約三分の二段分、横が前記孔の中央六列分である、

というものであることが認められ、孔自体の形状及び無孔部の縦・横の大きさがわずかに異なるものの、構成Fと極めて類似した形態が公知となっていたということができる。

(6) 構成Gの「底面は、中央部がわずかにふくらんだ長方形状であり、左右側面板と平行の二本の突リブと正面板及び背面板と平行の二本の突リブとが中央で交差し、ほぼ正方形の孔が底面全体にわたって格子状に縦一三個、横二三個(合計二九九個)整列して突設されており、これらほぼ正方形の孔群の外周には突リブが形成され、該突リブの四角部には無孔部が存し、それ以外の外周には底面から見てほぼ四角形に見え中央部に近づくに従ってわずかに縦が長くなる孔が、正面板及び背面板に沿ってそれぞれ二三個、左右側面板に沿ってそれぞれ一三個穿設されている」との点については、

第七〇一七七八号意匠公報(乙第九号証)記載の意匠は、底面は、中央部に縦三個、横四個(合計一二個)のほぼ正方形の孔を囲むように長方形状のリブが突設され、ほぼ正方形の孔が底面全体にわたって格子状に縦一三個、横二二個(合計二八六個。前記長方形状のリブ内の孔を含む。)整列して突設されており、これらほぼ正方形の孔群の外周には突リブが形成され、該突リブの四角部には無孔部が存し、それ以外の外周には底面から見てほぼ四角形に見える孔が、正面板及び背面板に沿ってそれぞれ二二個、左右側面板に沿ってそれぞれ一三個穿設されており、

第二五六一六七号の類似一意匠公報(乙第一〇号証)記載の意匠は、底面は、ほぼ正方形の孔が底面全体にわたって格子状に縦七個、横一三個(合計九一個)整列して突設されており、

錦化成製品A(乙第一六号証の一ないし6)の意匠は、底面は、ほぼ正方形の孔が底面全体にわたって格子状に縦一三個、横二三個(合計二九九個)整列して突設されており(但し、中央の五個は十字形に無孔部になっている。)、これらほぼ正方形の孔群の外周には突リブが形成され、該突リブの四角部には無孔部が存し、それ以外の外周には底面から見てほぼ正方形に見える孔が、正面板及び背面板に沿ってそれぞれ二三個、左右側面板に沿ってそれぞれ一三個穿設されている、

というものであることが認められ、構成Gと類似した形態が公知となっていたということができる。

また、底面の形状が、中央部がわずかにふくらんだ長方形状であるとの点は、孔自体及び孔群全体の形状が構成Gとは異なるが、スーパーメイト製品A(乙第一三号証の1ないし6)及びスーパーメイト製品C(乙第二四号証の1ないし6)の各意匠によって公知となっていたということができる。

(7) 構成Hの「右の突リブ外周の孔は、底面と正面板、背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面においては半楕円形状の孔としてあらわれる」との点については、

第七〇一七七八号意匠公報(乙第九号証)、錦化成製品A(乙第一六号証の一ないし6)の各意匠は、底面における孔群外周の突リブ外周の孔は、正面板、背面板及び左右側面板の孔を形成するリブが底面にまでブリッジ状に延びることにより正面板、背面板及び左右側面板の孔と連続的に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面においてはほぼ正方形の孔として表れる、というものであることが認められ、

その他、実開昭五八-四一三一四号公報(乙第一号証)記載の意匠は、底面における孔群外周の突リブは存在しないが、正面板、背面板及び左右側面板の孔を形成するリブが底面にまでブリッジ状に延びることにより正面板、背面板及び左右側面板の三段目の孔が底面においても表れるというものであることが認められ、

このように、底面におけるほぼ正方形の孔群外周の突リブ外周の孔について、正面板、背面板及び左右側面板の孔を形成するリブが底面にまでブリッジ状に延びることにより正面板、背面板及び左右側面板の孔と連続的に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面においてはほぼ正方形の孔としてあらわれるという形態は、公知となっていたということができるが、底面と正面板、背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されている(特に正面板及び背面板においては、最下段の孔と孔の中間の位置に形成されている。)という形態は、本件全証拠によるも、公知の意匠となっていたものとは認められない。

(8) 構成1の「かご本体の長手方向上側端縁には一対の係合部が突設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手秤が回動自在に設けられている」との点は、前記公知意匠のほとんどすべてにみられるものであり、極めてありふれた形態であると認められる。

(三)  右(二)認定の事実によれば、本件登録意匠の基本的構成態様、及び具体的構成態様のうち構成A、B、E、Iは、本件登録意匠の出願前においてありふれた形態であると認められるから、前記説示に照らし、需要者の注意を惹くものとはいえないことが明らかである。

構成Fについては、孔自体の形状及び無孔部の縦・横の大きさがわずかに異なるものの、構成Fと極めて類似した形態が公知となっていたから、需要者の注意を惹くものということはできない。構成Gについては、これと類似した形態が公知となっていたのであり、しかも、前記(一)のとおり手さげかごの通常の使用方法において底面は目につきにくいから、需要者の注意を惹くとは考えられない。なお、構成Gのうち、底面の形状が中央部がわずかにふくらんだ長方形状であるとの点は、右のとおり底面は目につきにくいというだけでなく、孔自体及び孔群全体の形状が異なるものの、公知となっていたものであり、しかも、本件登録意匠の底面の長方形における中央部のふくらみはよく注意しなければ看取しえない程度のものである。

一方、構成C及びDにおける新規な部分である、上下端が半円弧状の略長楕円形の孔が上方になるに従ってわずかに幅広になっているとの点、全体の孔群が略逆台形状を呈するについて、孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されているとの点、両側端縁には右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されているとの点は、いずれも需要者の目につき易い正面、背面及び左右側面における形態ではあるが、上下端が半円弧状の略長楕円形の孔が上方になるに従ってわずかに幅広になっているとの点は、その上方になるに従って幅広になる程度が注意して観察しなければ看取しえない程度のものであり、また、両側端縁に右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の大きさの切欠部が五個形成されているとの点は、かご本体を正しく正面、背面又は左右側面から観察したときに限って、隣の周側面に穿設された孔が切欠部として見えるというものにすぎず、よほど注意深く観察しない限り切欠部として認識しうるとは考えられないから、いずれも需要者の注意を惹くものということはできない。これに対し、全体の孔群が略逆台形状を呈するについて、孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されているとの点は、需要者の目につき易い正面、背面、左右側面のほとんど全体を占めるものであり、同じように全体の孔群が略逆台形状を呈するものでも、孔の縦列はすべて垂直で、左右端又はこれに加えてその一つ内側の縦列のみがかご本体の両側端縁に沿ってカットされている形態の公知意匠が、需要者に堅い直線的な印象を与えるのとは異なり、孔自体の形状とも相俟って、柔らかな印象を与えるものであるから、この点は、需要者の注意を強く惹くものといわなければならない。

また、構成Hの「右の突リブ外周の孔は、底面と正面板、背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面においては半楕円形状の孔としてあらわれる」との点は、特に正面板及び背面板においては最下段の孔と孔の中間の位置に形成されている形態が新規なものであり、その正面板及び背面板に占める面積の小ささから前記構成C及びDには及ばないものの、需要者の注意を惹くものというべきである。

そうすると、本件登録意匠において需要者の注意を最も強く惹く部分は、全体の孔群が略逆台形状を呈するについて、孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されているとの点にあるということになる。

3(一)  次に、被告意匠の特定について、原告は別紙物件目録(一)記載のとおり特定すべきであると主張するのに対し、被告は別紙物件目録(二)記載のとおり特定すべきであると主張するので、検討する。

原告主張の別紙物件目録(一)添付の被告意匠図面と被告主張の別紙物件目録(二)添付の被告意匠図面とを比較対照すると、大きな違いはないが、〈1〉原告主張の図面では、正面図において、広告表示用の長方形状の無孔部のほぼ外周に沿ってラインが記載されているのに対し、被告主張の図面ではこれが記載されていない、〈2〉被告主張の図面では、正面、背面、左右側面の下端に存在する半楕円形状の孔の下部に波線状が全周にわたり記載されているのに対し、原告主張の図面ではこれが記載されていない、〈3〉平面図において、被告主張の図面では、正面、背面、左右側面の孔に肉厚分の見線が記載されているのに対し、原告主張の図面ではこれが記載されていない、〈4〉被告主張の図面では、把手杆やその係合部に稜線が記載されているのに対し、原告主張の図面ではこれが記載されていない、という相違があるところ、被告製品であることについて争いのない検甲第一、第二、第四号証によれば、右〈1〉の点については、正面板及び背面板における広告表示用の長方形状の無孔部の外周にラインが認められないわけではないものの、極細く薄いものであって、目を近づけてよほど注意深く観察しない限り看取しえないものであること、一方、右〈2〉ないし〈3〉の点については、正面、背面、左右側面の下端に存在する半楕円形状の孔の下部には波線状が全周にわたり存在し、正面、背面、左右側面の孔に肉厚分の見線があり、把手杆やその係合部に稜線のあることが容易に看取しうることが認められる。したがって、これらの点が正確に記載されている被告主張の別紙物件目録(二)添付の被告意匠図面を採用したうえ、これにそって別紙物件目録(三)記載のとおり被告意匠を特定するのが相当である。原告は、被告主張の図面は正面図及び背面図の無孔部のラインの点を除き、本来意匠図面の作図としては不要な稜線を記載している旨主張するが、稜線であることから直ちに意匠を構成しない線ということはできないから、原告主張の別紙物件目録(一)添付の被告意匠図面を採用するのは相当でない。

(二)  そして、別紙物件目録(三)の記載によれば、被告意匠の基本的構成態様は、かご本体が横長長方形で上面幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔が穿設され、両側上端縁に一対の把手杆を有している手さげかごであり、その具体的構成態様は次のとおりであると認められる。

a かご本体1の、上部における縦と横の構成比が約一対二で、下部における縦と横との構成比が約二対三の横長な形態からなり、

b かご本体1の周側面2が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

c かご本体1の正面板3及び背面板4には、上下端が半円弧状の略楕円形状の孔5が、縦四段で、横二〇列に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔5の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成され、両側端縁6との間に孔一個分ほどの幅の無孔部7を有しており、

d かご本体1の左右側面板8には、正面板3及び背面板4における孔5と同形状の孔5が縦四段で、横一四列に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔5の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成され、両側端縁6との間に孔一個分ほどの幅の無孔部9を有しており、

e 正面板3及び背面板4の中央上方部に広告表示用の長方形状の無孔部10が設けられ、

f 右無孔部10のため、最上段の孔11は、縦長さが孔5の約半分で上下端が半円弧状の略楕円形状の小孔として一二個形成され、その下の無孔部10の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が孔5の中央一二列分であり、

g 底面12は長方形状であり、左右側面板8と平行の二本の縦枠13と正面板3及び背面板4と平行の二本の横枠14とが中央で交差し、その中心部が正方形状の無孔部15となっており、該無孔部を挟んで正面板3及び背面板4との間に略正方形状の小孔16がそれぞれ一五個(五段×三列)、右無孔部15と小孔16群を挟んで左右に左右側面板8との間に正面板3、背面板4及び左右側面板8における孔5と同形状の孔5がそれぞれ五二個(一三段×四列)穿設されており、これらの孔5、16群の外周には四隅部が突出する突リブ21が形成され、かつ、突リブ21の四角部には補強片22の設けられた無孔部が存し、それ以外の外周には底面から見てやや長い半楕円形状に見える孔18が、正面板3及び背面板4に沿ってそれぞれ一九個、左右側面板8に沿ってそれぞれ一三個穿設されており、

h 右の孔18は、底面12と正面板3、背面板4及び左右側面板8とをブリッジ状に連接するリブ17によって正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面においては、半楕円形状の孔として表れ、

i かご本体1の長手方向上側端縁には一対の係合部19が穿設され、該係合部19には平面から見て略コ字状の把手杵20が回動自在に設けられている。

4(一)  そこで、被告意匠を本件登録意匠と対比すると、被告意匠は、かご本体が横長長方形状で上面が幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔が穿設され、両側上端縁に一対の把手杵を有している手さげかごであるという基本的構成態様において本件登録意匠と一致し、具体的構成態様において、

〈1〉 構成aとA、すなわち、かご本体の、上部における縦と横の構成比が約一対二であり、下部における縦と横の構成比が約二対三の横長な形態からなること、

〈2〉 構成bとB、すなわち、かご本体の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなること、

〈3〉 構成cとCにおいて、かご本体の正面板及び背面板に、上下端が半円弧状の略楕円形状の孔が、段・列をなして、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有していること、

〈4〉 構成dとDにおいて、かご本体の左右側面板に、正面板及び背面板における孔と同形状の孔が、段・列をなして、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されていること、

〈5〉 構成eとEにおいて、正面板及び背面板の中央上方部に広告表示用の長方形状の無孔部が設けられていること、

〈6〉 構成fとF、すなわち、右無孔部のため、最上段の孔は、縦長さが前記孔の約半分で上下端が半円弧状の略楕円形状の小孔として形成され、その下の無孔部の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が前記孔の中央一二列分であること、

〈7〉 構成gとGにおいて、底面は長方形状であり、孔が底面全体にわたって整列して穿設されており、これら孔群の外周には突リブが形成され、該突リブの四角部には無孔部が存し、それ以外の外周には孔が正面板及び背面板に沿って多数個、左右側面板に沿ってそれぞれ一三個穿設されていること、

〈8〉 構成hとH、すなわち、右の突リブ外周の孔は、底面と正面板、背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面において半楕円形状の孔として表れること、

〈9〉 かご本体の長手方向上側端縁には一対の係合部が突設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手杵が回動自在に設けられていること、という点で一致しており、

(1) 構成cとCにおいて、正面板及び背面板に穿設された孔が、本件登録意匠では縦五段で、横二四列であり、上方になるに従ってわずかに幅広になるのに対し、被告意匠では縦四段、横二〇列であり、幅は一定であり、また、本件登録意匠では、両側端縁に右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の切欠部が五個形成されているのに対して、被告意匠ではそのような切欠部は形成されていないこと、

(2) 構成dとDにおいて、左右側面板に穿設された孔が、本件登録意匠では縦五段で、横一五列であり、上方になるに従ってわずかに幅広になるのに対し、被告意匠では縦四段で、横一四列であり、幅は一定であり、また、本件登録意匠では、両側端縁に右孔と縦長さが同じで横幅が約二分の一の切欠部が五個形成されているのに対して、被告意匠では、孔の左右端の縦列と両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有していること、

(3) 構成eとEにおいて、正面板及び背面板の中央上方部に設けられた広告表示用の長方形状の無孔部について、本件登録意匠ではそのほぼ外周に沿ってラインが存在するのに対して、被告意匠ではそのようなラインは存在しないこと、

(4) 構成gとGにおいて、底面の長方形状について、本件登録意匠では中央部がわずかにふくらんでいるのに対して、被告意匠ではそのような中央部のふくらみはなく、また、本件登録意匠では、左右側面板と平行の二本の突リブと正面板及び背面板と平行の二本の突リブとが中央で交差し、ほぼ正方形の孔が底面全体にわたって格子状に縦一三個、横二三個(合計二九九個)整列して穿設されているのに対して、被告意匠では、正面板及び背面板と平行の二本の横枠と左右側面板と平行の二本の縦枠とが中央で交差し、その中心部が正方形状の無孔部となっており、該無孔部を挟んで正面板及び背面板との間に略正方形状の小孔がそれぞれ一五個(五段×三列)、右無孔部と小孔群を挟んで左右に左右側面板との間に正面板、背面板及び左右側面板における孔と同形状の孔がそれぞれ五二個(一三段×四列)穿設されており、更に、被告意匠では、孔群の外周に形成された突リブの四隅部が突出し、該突リブの四角部に存する無孔部には補強片が設けられており、それ以外の外周に穿設された孔は、底面から見てやや長い半楕円形状に見え、正面板及び背面板に沿った個数が一九個であるのに対して、本件登録意匠では、右のような突リブ四隅部の突出や該突リブ四角部の無孔部における補強片はなく、突リブの外周に穿設された孔は、底面から見てほぼ四角形に見え、中央部に近づくに従ってわずかに縦が長くなり、正面板及び背面板に沿った個数が二三個であること、

という点において相違していることが認められる。

(二)  右の一致点のうち、〈3〉及び〈4〉の、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、上下端が半円弧状の略楕円形状の孔が、段・列をなして、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されているとの点は、前記のとおり本件登録意匠において需要者の注意を最も強く惹く部分における一致点であり、被告意匠と本件登録意匠との類否判断に大きな影響を与えるものといわなければならない。併せて、〈8〉の、突リブ外周の孔は、底面と正面板、背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に(特に正面板及び背面板においては最下段の孔と孔の中間の位置に)形成されているとの点も、前記のとおり需要者の注意を惹く部分における一致点ということになる。

これに対し、前記相違点(1)ないし(4)は、以下のとおり、いずれも重要な相違点ではなく、意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものではない。

(1) 相違点(1)及び(2)のうち、正面板、背面板及び左右側面板に穿設された孔の段・列の数の違いについては、前記2(二)認定のとおり、これらの孔の段・列の数の組合せは種々あるのであって、公知意匠にみられる段・列の数の組合せの範囲を著しく逸脱したものでない限り、要するに数個の段・多数個の列からなるという程度に認識されるにすぎないから、孔の段・列の数の組合せにおける被告意匠と本件登録意匠程度の差異が需要者の注意を惹くものとはいえない。切欠部の有無その他の相違点も、同様である。

(2) 相違点(3)の無孔部外周のラインの有無については、これが存在するものも存在しないものも、ありふれた形態であるから、その有無が需要者に強い印象を与えるものとはいえない。

(3) 相違点(4)は、底面の形状に関するものであり、前示のとおり通常の使用方法において目につきにくいものである(のみならず、底面についても、前記〈7〉のような一致点も認められるのであり、被告意匠と本件登録意匠では底面の形状が全く異なるというものではない。)。

(三)  以上によれば、被告意匠は、本件登録意匠において需要者の注意を最も強く惹く部分である一致点〈3〉及び〈4〉の点、すなわち、かご本体の正面板、背面板及び左右側面板に、上下端が半円弧状の略楕円形状の孔が、段・列をなして、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、孔の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されているとの点で本件登録意匠と一致し、柔らかな印象を与え、一致点〈8〉その他の一致点とも相俟って、前記相違点(1)ないし(4)の影響を凌駕して本件登録意匠と共通の美感を起こさせるものであり、本件登録意匠に類似するものといわなければならない。

5  したがって、被告が被告製品を販売することは本件意匠権を侵害するものであるから、原告の差止請求のうち被告製品の販売の停止を求める部分、及び廃棄・除却請求のうち被告製品の廃棄を求める部分は理由があるということになる。

しかし、被告は、被告製品を自ら製造していると認めるに足りる証拠はなく、後記二のとおり南部化成株式会社が製造した被告製品を同社から仕入れて販売しているものであって、被告が自ら製造しているのと同視しうる関係にあるとか、製造のための金型は被告の所有であるというような事実を認めるに足りる証拠はないから、原告の差止請求のうち被告製品の製造の停止を求める部分、及び廃棄・除却請求のうち被告製品の半製品の廃棄及び被告製品の製造に必要な金型の除却を求める部分は、理由がないといわなければならない。

二  争点2(被告が原告に対して損害賠償義務を負う場合、賠償すべき損害の額)について

甲第一三、第一四号証、乙第三二号証の1・2、第三三、第三四号証によれば、被告は、平成五年一〇月から平成七年二月までの間に、南部化成株式会社が製造した被告製品を、同社から一個当たり三一〇円で合計七万〇〇五〇個(仕入総額二一七一万五五〇〇円)仕入れて、株式会社セブンーイレブン・ジャパンに対して一個当たり三七一円で合計六万九五五六個(販売総額二五八〇万五二七六円)販売したことが認められる。

したがって、被告は、被告製品を六万九五五六個販売することにより、販売総額二五八〇万五二七六円から仕入額二一五六万二三六〇円(三一〇円×六万九五五六個)を控除した四二四万二九一六円の利益を得たものと認められ、意匠法三九条一項により、右額は原告が被った損害の額と推定される。

してみれば、原告の損害賠償請求は右四二四万二九一六円の支払を求める限度で理由があり、その余については理由がないこととなる。

第五  結論

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 田中俊次 裁判官 小出啓子)

物件目録(一)

別紙被告意匠図面に示すとおり、左記基本的構成態様及び具体的構成態様からなる手さげかご。

(1) 基本的構成態様

かご本体が横長長方形状の上面幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔を穿設してなり、しかも両側上端縁に一対の把手杆を有してなる手さげかご。

(2) 具体的構成態様

a かご本体の縦横の構成比が約二対三の横長な形態からなり、

b かご本体の周側面が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

c かご本体の正面板及び背面板には、上下端が半円弧を呈する略楕円形状の孔が縦四列、横二〇列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔の左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されてなり、

d かご本体の左右側面板には、前記孔と同形状の孔が縦四列、横一四列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔の左右端の縦列はかご本体の両側端縁に略平行して一直線状に形成されてなり、

e しかも、前記正面板及び背面板の中央上方部には広告表示用の長方形状の無孔部が設けられてなり、

f 前記無孔部によって、正面及び背面の最上列の孔の中央部分が小孔として形成され、かつ、その小孔群の直下の二列目は無孔状態に形成されてなり、

g かご本体の底面には、二本の縦枠を介して左右に楕円形状の孔が横向きに多数穿設され、かつ、中央部には正方形状の無孔板とその下に略おにぎり形状の孔が多数穿設されてなり、

h かご本体の底面と正面、背面、左右側面の周側面の下側面との間には多数のリブがブリッジ状に連接されて多数の窓開き形状として形成されてなり、

i かご本体の長手方向上側端縁には一対の係合部が穿設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手杵が回動自在に設けられてなる

j 手さげかご。

被告意匠図面

〈省略〉

物件目録(二)

別紙被告意匠図面に示すとおり、左記基本的構成態様及び具体的構成態様からなる手さげかご。

(1) 基本的構成態様

かご本体が横長長方形状の上面が幅広に形成されている上面開口型で、かつ、その周側面及び底面に多数の孔を穿設しており、横長周側面の上部に無孔部を形成しており、しかも両側上端縁に一対の把手秤を有してなる手さげかご。

(2) 具体的構成態様

a かご本体1の、縦と横上部の構成比が約一対二であり、横下部及び中間部における縦横の構成比が約二対三の横長な形態からなり、

b かご本体1の周側面2が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

c かご本体1の正面板3及び背面板4には、上下端が半円弧を呈する略長楕円形状の孔5が縦二〇列、横四列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔5の左右端の縦列は、かご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成されているが、孔5の左右端の縦列とかご本体1の両側端縁6との間には、縦に前記孔5一個分ほどの無孔部7があり、

d かご本体1の左右側面板8には、前記孔5と同形状の孔が縦一四列、横四列、全体の孔群が略逆台形状を呈すべく穿設されてなり、かつ、該孔5の左右端の縦列はかご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成されているが、右孔5の左右端の縦列とかご本体1の両側端縁6との間には縦に右孔5一個分ほどの無孔部9が存在し、

e しかも、前記正面板3及び背面板4の中央上方部でかつ前記孔5の左右端列から中央部へ五個目以降には、広告表示用の長方形状の無孔部10が設けられてなり、

f 前記無孔部10によって、正面板3及び背面板4の最上列の孔5の中央部分が小楕円孔11として一二個形成され、かつ、その小孔群の直下の二列目は無孔部10に形成されており、

g かご本体1の底面12には、各二本の縦枠13と横枠14により中央部に正方形状の無孔部15が形成され、該無孔部15の前後には三列の略正方形状の小孔16が形成され、該小孔16及び前記無孔部15の左右には前記左右側面板8に形成された略長楕円形状の孔5と同方向、同形状の略長楕円形状の孔が横一三列、縦各四列に穿設されており、これら各孔5、16の外周には四隅部が突出する突リブ21が形成され、かつ、突リブ21の四角部には補強片22が存し、それ以外の外周には半楕円形状の孔18が穿設されており、

h かご本体1の底面12と正面板3、背面板4、左右側面の周側面2の下側面17との間にはほぼ半楕円形状の孔18が形成されており、

i かご本体1の長手方向上側端縁には一対の係合部19が穿設され、該係合部には平面から見て略コ字状の把手杵20が回動自在に設けられてなる

j 手さげかご。

被告意匠図面

〈省略〉

物件目録(三)

別紙被告意匠図面に示すとおり、左記基本的構成態様及び具体的構成態様からなる手さげかご(なお、背面図は正面図と、左側面図は右側面図と同一に表れる。)。

(1) 基本的構成態様

かご本体が横長長方形状で上面が幅広に形成されてなる上面開口型で、かつその周側面及び底面に多数の孔が穿設され、両側上端縁に一対の把手杆を有している手さげかご。

(2) 具体的構成態様

a かご本体1の、上部における縦と横の構成比が約一対二で、下部における縦と横の構成比が約二対三の横長な形態からなり、

b かご本体1の周側面2が上方に向かって順次幅広な形態からなり、

c かご本体1の正面板3及び背面板4には、上下端が半円弧状の略楕円形状の孔5が、縦四段で、横二〇列に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔5の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成され、両側端縁6との間に孔一個分ほどの幅の無孔部7を有しており、

d かご本体1の左右側面板8には、正面板3及び背面板4における孔5と同形状の孔5が縦四段で、横一四列に、全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔5の中央の縦列は垂直で、中央から離れるに従ってしだいに傾斜し、左右端の縦列は、かご本体1の両側端縁6に略平行して一直線状に形成され、両側端縁6との間に孔一個分ほどの幅の無孔部9を有しており、

e 正面板3及び背面板4の中央上方部に広告表示用の長方形状の無孔部10が設けられ、

f 右無孔部10のため、最上段の孔11は、縦長さが孔5の約半分で上下端が半円弧状の略楕円形状の小孔として一二個形成され、その下の無孔部10の大きさは、縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分、横が孔5の中央一二列分であり、

g 底面12は長方形状であり、左右側面板8と平行の二本の縦枠13と、正面板3及び背面板4と平行の二本の横枠14とが中央で交差し、その中心部が正方形状の無孔部15となっており、該無孔部を挟んで正面板3及び背面板4との間に略正方形状の小孔16がそれぞれ一五個(五段×三列)、右無孔部15と小孔16群を挟んで左右に左右側面板8との間に正面板3、背面板4及び左右側面板8における孔5と同形状の孔5がそれぞれ五二個(一三段×四列)穿設されており、これらの孔5、16群の外周には四隅部が突出する突リブ21が形成され、かつ、突リブ21の四角部には補強片22の設けられた無孔部が存し、それ以外の外周には底面から見てやや長い半楕円形状に見える孔18が、正面板3及び背面板4に沿ってそれぞれ一九個、左右側面板8に沿ってそれぞれ一三個穿設されており、

h 右孔18は、底面12と正面板3、背面板4及び左右側面板8とブリッジ状に連接するリブ17によって、正面板、背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり、正面、背面及び左右側面においては半楕円形状の孔として表れ、

i かご本体1の長手方向上側端縁には一対の係合部19が穿設され、該係合部19には平面から見て略コ字状の把手杆20が回動自在に設けられている。

被告意匠図面

〈省略〉

意匠公報〈1〉

日本国特許庁

平成5年(1993)3月18日発行 意匠公報(S)

B4-1K

863998 意願 平1-28534 出願 平1(1989)8月2日

登録 平4(1992)12月25日

創作者 西田栄太郎 大阪府東大阪市本庄西1丁目62番地

意匠権者 大和産業株式会社 大阪府東大阪市本庄西1丁目62番地

代理人 弁理士 辻本一義 外1名

審査官 森本敬司

意匠に係る物品 手さげかご

説明 背面図は正面図と、左側面図は右側面図と同一にあらわれる。

〈省略〉

意匠公報〈2〉

日本国特許庁

平成5年(1993)9月16日発行 意匠公報(S)

B4-1K類似

863998の類似1 意願 平2-939 出願 平2(1990)1月16日

登録 平5(1993)6月14日

創作者 西田栄太郎 大阪府東大阪市本庄西1丁目62番地

意匠権者 大和産業株式会社 大阪府東大阪市本庄西1丁目62番地

代理人 弁理士 辻本一義 外1名

審査官 朝倉悟

意匠に係る物品 手さげかご

説明 背面図は正面図と、左側面図は右側面図と同一に表れる。

〈省略〉

類似意匠図面〈1〉

〈省略〉

類似意匠図面〈2〉

〈省略〉

〈省略〉

本件登録意匠説明図

〈省略〉

被告意匠説明図

〈省略〉

意匠公報

〈省略〉

意匠公報

〈省略〉

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